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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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(大名家の若君……じゃあ、斬り殺されたのは、あの子の母親の……側室の方、って訳か)



まさか

大名家の御正室が、深夜に屋敷を抜け出して斬り殺される訳がない


だとしたら

殺された女人は側室で

侑李ちゃんは側室の子だと言う事だろう


…側室と、その子供の若君が命を狙われる理由なんて、大概決まっている



(……また、跡目争いのお家騒動ってやつかい……)



お智「……にの江姉さんは、侑李ちゃんのお名前に心当たりがおありなのでしょう?

もしかしたら、侑李ちゃんのお母様の事をご存知なのでは…?」

にの江「……あたしは、直接会った訳じゃないんだけどね」



あたしは、重たい気持ちを振り払う様に、大きく息を吐いて

昨夜、信吾さんから聞いた話を


そのままそっくり、お智ちゃんに話して聞かせた







お智「なんてこと…!!

じゃあ、じゃあ……あの子のお母様は……」

にの江「……もう、この世には居ないよ」

お智「ああっ…////」



自らも、赤子の頃に母を亡くし

お家騒動に巻き込まれ、屋敷を追われたお智ちゃんには


侑李ちゃんに対して、同情と言う言葉では言い表せらせない様な、只ならぬ想いがあったのだろう


お智ちゃんは「ああ」と言って声を上げたきり

両手で顔を覆うと、肩を震わせながら泣き出してしまった



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