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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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お智「恋太郎、お庭から出てはなりませんよ?」

恋太郎「あぁ〜い♪」(←お智ちゃんの言うことはちゃんと聞くらしい(笑))

お智「ふふふ…///」



私は、トコトコと楽しげに遠ざかって行く恋太郎の背中を見送って

それが裏庭の辺りを行ったり来たりしているのを眼の端っこで追いながら

お掃除を続けました


すると

お掃除を終えておあげさんをお供えしておりましたら

何やら、恋太郎と、聞き慣れない男の子の話し声が聞こえて来たのです



お智「……恋太郎?」



不思議に思って裏庭へ行くと

恋太郎が、旅姿の恋太郎より少し年上に見える男の子と仲良く喋っていおりました



お智「まあ、何処の子かしら?……坊や、お名前は?何処から来たの?」



男の子は、旅姿をしているのに

親の姿が見えないし、しかも、何故だかひどく汚れたなりをしておりました


それで私は、迷子なのではと思い、男の子に訊ねたのですが…



男の子「………おなまえ………いったら、だめって……ははさまがいってた/////」



男の子は、名前を訊かれると

今にも泣きそうな顔をしてふるふると首を振ったのです



(母親に名乗るなと言われた…?)



お智「…………」



大名家の姫として長らく暮らしていた経験で

あるコトがぴんと頭に閃いた私は


それ以上、その子の素性を問うコトはせずに、にっこりと笑って恋太郎を抱き寄せて言いました



お智「坊や、お腹がすいてはいませんか?

ちょうどこれからご飯にしようと思っていたの

一緒にあがらない?

ね、恋太郎

恋太郎も、お友達と一緒にご飯が食べたいでしょう?」

恋太郎「うん!たべたい!!///」

お智「ね?……いらっしゃい?」

男の子「………」



すると男の子は、黙ったままで小さく頷いたのです



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