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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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にの江「………さて、じゃあ先ずは、お智ちゃんの話を聞かせてもらおうかね」



あたしは雅吉たちの姿をすっかり見えなくなるまで見送ってから

お智ちゃんに話を促した



お智「………はい」

にの江「でも、取り敢えず茶でも沸かすかねぇ

馬鹿に付き合ってたら喉渇ちまったよ(笑)」

お智「まあ、……うふふ///」



お智ちゃんはあたしの軽口を聞くと、とても一児の母とは思えない位に

可愛らしく笑った









お智「………コレを、………あの子の着物の袂に、まるで隠すみたいに縫い込まれて居たものです。」



お茶を淹れて、居間に移動した後

一息ついたお智ちゃんが、そう言いながら

懐から、何やら家紋の入った立派な守り袋を取り出して卓袱台の上に置いた



にの江「……コレを……あの、侑李ちゃんが…?」

お智「……はい

実は、今朝方、日課にしております、店の裏のお稲荷さんの掃除をして

最後に、おあげさんを供え手をあわせておりましたら

何やら恋太郎と誰かよその子どもの声が致しまして…」



お智ちゃんは、小さなため息をつきながら

侑李ちゃんを拾った経緯を話し始めた







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今朝も

私は恋太郎を連れて、お店の裏のお稲荷さんのお掃除をしておりました


恋太郎は、はじめは少し手伝ってくれていたのですが

すぐに飽きてしまって、裏庭の方へトコトコと遊びに行ってしまって……




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