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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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雅吉「子守って、お前ぇ…」

恋太郎「やらっ!!」



子守と聞いて顔をしかめる雅吉を見て、恋太郎ちゃんが叫んだ



お智「これ、恋太郎!」

恋太郎「やらやらやらやら!!こいたろーは、かぁたまといっちょがいい!!////」

お智「もぅ、恋太郎ったら…///」



お智ちゃんはちょっと困った顔をすると、やだやだと駄々をこねる愛息子を抱き上げた



男の子「……………ははさま////」



その様子をじっと見詰めていた男の子は、ボソッと小さい声でそう呟くと

黒目勝ちな大きな目に、うるうると涙を浮かべた



お智「あぁ、ごめんね、お母様が恋しくなっちゃったのね…」



お智ちゃんは、片腕に恋太郎ちゃんを抱いたまま屈んで

そっと男の子を抱き寄せた



お智「今ね、にの江姉さんたちに侑李ちゃんのお母様を捜して下さる様にお願いを…」
にの江「ゆうりだって!?」

お智「………え?」



昨夜、生田さんから伝言で捜してくれと頼まれたのと同じ名前に、思わずその男の子に駆け寄る



人見知りするのか、ずっと此方を見ないようにしていたその子が、やっとあたしの方へ目を向けた



侑李「!!……ははさま!!/////」

にの江「………へ?」



あたしの顔を見るなり、“母さま”と叫んであたしに抱き付く男の子を見て

雅吉が眉を寄せながら呟いた



雅吉「…………お前…………いつの間に子供なんざ産みやがったんだ?」

にの江「馬鹿をお言いでないよっ!あたしがっ…………」



子を産める訳がない


そう言いかけて、言葉が詰まる



雅吉「……………悪かった

今のは、………ひでぇ失言だな(苦笑)」



雅吉は、男の子に抱きつかれたまま固まるあたしに、すまなそうにして謝ると

男の子の隣にしゃがんでその顔を覗き込んだ



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