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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第4章 禅寺人斬り騒動編


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お智「ごめん下さい、にの江姉さん」

恋太郎「にーえねぇたん、ごめんくーたい!」


にの江「はぃよっ!今行きますよ!」

雅吉「いてっ」



信吾さんが夜遅くに物騒な知らせをしにやってきた翌日


あんまりカラダが怠いんで、雅吉と一緒になって昼過ぎまでゴロゴロと寝床に寝転がっていたら

玄関先からお智ちゃんと恋太郎ちゃんの元気な声が聞こえて来た


あたしはその声を聞くと、何時までも自分に纏わりつく雅吉を蹴飛ばして(笑)玄関へ走って行った



にの江「いらっしゃい二人とも………おや?」



玄関にすっ飛んで行ってお智ちゃんと恋太郎ちゃんを出迎えると

その二人の後ろに小さな人影が見えた



にの江「……その子は何処の子だぃ?この辺じゃ見掛けない顔だけど……」



あたしは、お智ちゃんの後ろに隠れる様にして俯いて立っている

綺麗な顔をした男の子を覗き見た


男の子は、齢、3・4歳と言ったところだろうか

恋太郎ちゃんよりは少しお兄さんに見えた



お智「ええ、それが……実は、この子のコトで、にの江姉さんに折り入ってご相談が御座いまして…」


雅吉「ふわぁあ〜〜……よぉ、お智ちゃんに恋太郎!おはよぅさん!」



お智ちゃんが、自分の後ろに隠れている少年の肩に手を置いて、その体を少し前に押し出したところで

雅吉が呑気に欠伸をしながらやって来た



にの江「おはようじゃないよ、このオタンコナス!もうとうにお天道様ぁ天辺まで登っちまってんだから!」

雅吉「…んなコト言ったてよぅ、にの江…」

にの江「お前さんは黙っておいで!」



あたしは、馬鹿亭主が昨夜のコトを口を滑らせて喋るんじゃないかと思い

慌ててそう言うと、恋太郎ちゃんと見知らぬ男の子を指差した



にの江「あんたは恋太郎ちゃんとその子のお守りでもしといとくれ!

あたしはお智ちゃんの話を居間でゆっくり聞くから!」



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