第11章 エピローグ
それからさらに数日後。私は変わらず、ドズル社で働いていた。
「先輩、これでいいですか?」
チェック資料を先輩に渡し、先輩が資料に目を通す。難なくいいよいいよと許可をもらい、ありがとうございますと引き返そうとした時、先輩の机にある写真立てに目が止まった。
「先輩、それって……」
私は思わず写真立てを目で指す。先輩は私の視線に気づいて、ああ、これは、と写真立てを手に取った。
「休日は動物園に行くんだけどね、特に好きなのがゴリラで」と写真のゴリラを指で撫でながら先輩は語る。「特にこのゴリラが気に入っててね、よく見に行ったものだよ。一年前に亡くなったんだけど」
結構高齢だったんだ、と先輩は話してくれて、私はようやく理解した。先輩の運転する車の助手席にいる黒いモヤみたいな守護霊は、ゴリラだったのだと。
「あ、この前はぼんさんの修理に行ってくれたんだよね? あの時丁度、この子の一周忌でさ」
代わりに行ってくれてありがとう、と先輩は言ってくれて、これくらい大丈夫ですと答えながら、私は先輩の周りに目を凝らしてみた。先輩の後ろには、カッコイイ姿のゴリラが見えた。それは頼もしい守護霊のように見えた。
「あ、そうだ。今度、アレイを使ったMODを考えているんだけどさ」
「え?」
「ほら、このゲームのアレイ」
「あ……!」
私は先輩が見せてくれたパソコンのゲーム画面を見てはっとした。「アレイ」というゲームキャラクターは、おんりーさんの周りにいた守護霊にとてもよく似ていたからだ。
「……って聞いてる?」
「あ、すみませんっ」
今まで怖いと思っていた守護霊が、ほんのちょっとだけ好きになれる気がした。