第10章 知らない女の子と五条くん
「彼氏が好きそうだからこれ買うー!」
私達のすぐ近くで下着を見ていた女性が、セットを一組取って一緒にいた友人に見せていた。
「脱がせやすそうなデザインじゃなーい?襲われんなよー!」
友人に茶化されて、女性は照れながらレジへと進んだ。
彼氏の為に下着を選ぶ…そういう考えもあるのね。
彼氏…五条くんは形や建前上そういう関係ではあるけど…。
元々は偽りの関係。
五条家の人間だから、復讐に使えそうだから。
いざという時、しかるべき時にその五条家の後ろ盾を活かす為に関係を公にするタイミングを測っている…ようじゃ、ダメなのかもしれない。
五条くんは私を真っ直ぐに見て、好きだと何度も伝えてくれた。
曲がりくねりながらも、私もその気持ちに応え…るまでは、まだ…だけど、
私も五条くんが好きだと自覚した。
想い合っていない偽りの恋人だから、なんて後ろめたさはない。
五条くんが私に好きと言うように、私も五条くんが好きと返せる日だって、いつかは…。
復讐と併せてタイミングを二重に見計らっているようでは…やっぱり……ダメね。