第12章 2月
夏油side
今日はバレンタイン。
昨日、任務が終わってから風海の部屋に行くと、甘い匂いをさせていたので、硝子の部屋で内緒で作ってくれているのかと嬉しくなった。
今までもらった数は底知れず。
でも、本命から本命チョコをもらうのは初めての経験だから、今日の日を楽しみにしていた。
いつものような朝を迎え少しそわそわしたが、こちらから言い出すのは格好がつかないと思っていつも通り部屋を出た。
なぜだ?
誕生日は“1番に言いたかった”と言っていたじゃないか。バレンタインは別枠なのか?一緒に部屋を出た悟も同じことを考えていたのだろう。
悟「なぁ、傑。今日ってなんの日か知ってる?」
傑「…あぁ、バレンタイン?」
悟「そう!アイツさ…知らねぇのかな?」
そーゆー思考になる君が羨ましいよ。知らないわけないだろ?!日本人だぞ。でももしかしたら風海の家庭では、男性から女性にあげるアメリカンな文化なのかも知れない。だったら一大事。私が先に渡さなければいけなかった。
それと悟だけこっそりもらってなかったことにも安心した。私だけもらえていないなら、泣いていたかもしれない。
少し落ち込んだまま教室に向かうと、すでに硝子がいた。
硝「おはよ〜!ハッピーバレンタイン♡」
机の上にコーヒーが置いてある。悟の机にはココア。
傑「おはよう、硝子。ありがとう!いつも飲んでいるのを買ってくれたんだね?」
硝「まぁね。風海からもらったのと一緒に飲めばいいかなって思ってさ」
悟「まて!硝子は風海からもらった?」
硝「…まぁ、もらったかな」
傑悟「…!!?」
女子にあげる優先順位よりも低いという経験がない私は狼狽えた。たぶん悟も衝撃だったんだろう。その場に膝をついていた。
私も例外ではなく、天を仰ぎ考えを巡らせる。
傑「…!!悟、机の中は?!」
悟は慌てて確認したが、横に首を振った。どうしたものか…
悟「昼に1年の教室に行ってみるか。」
午前中は気になって授業どころではなかった。
こんなこと初めてだ。
朝から囲まれたり、呼び出されたり、机の中に手紙と一緒に入っていたり…本命だと言われて渡されることの方が多かった。なのに今年はまだ硝子からの缶コーヒーだけ。ちょっと落ち込む。いや、かなりか。