第1章 眠り姫
待ちに待った約束の日。
「待たせてすまない」
「ううん」
葡萄酒が入った瓶を持った日光が、主の許へやって来た。
縁側に座って空を眺める主の隣に腰を下ろすと、葡萄酒を主が持ってきたグラスに注いで手渡す。
「ありがとう。日光が仕込んでいた葡萄酒、すごく楽しみにしてたの」
「主の口に合うと良いが」
主は大切そうにグラスを持って、葡萄酒の色や香りを確認している。
「じゃあ日光、乾杯」
日光が持つグラスに自分が持つグラスを近付け、カチンと音を鳴らすと葡萄酒を一口飲む。
「ん、甘くて美味しい…!」
「雑味はないか」
「ないよ。すごく美味しい…!
今まで飲んできたお酒の中では1番かも」
味覚によりけりだけどお酒には当たり外れがあるが、日光が作ってくれた葡萄酒は当たりだった。
「飲みやすいよ、これ」
「…そうか、喜んでもらえたなら何よりだ」
自画自賛するくらい美味く出来た葡萄酒は、素材となる葡萄が良かったからだ。
他の刀達も美味しかったと言っていたから、あの葡萄は生食でも評判が良かった。
主が丹精込めて育てた葡萄を使っているのだから当然か、とも思う。