第1章 眠り姫
日光一文字はどうだか知らんがな。
と言いながら、毛布を持ってきて主の肩に掛けてやっている。
「………まんば…」
「山鳥毛も言っていたが、今夜は冷える。風邪ひくなよ」
「……そう言えば今夜は冷えるなぁって思っていたところなの。ありがとう」
そんな2人の様子を見て、主と山姥切国広は信頼関係が出来上がっていることがよく分かった。
「今日の月齢は?」
「十日夜の月、2〜3日後には満月よ」
「…そうか。月見もいいが、身体を冷やす前に部屋に戻れよ」
「ありがとう、大丈夫よ」
山姥切国広は主の頭に触れて、ふっと微笑する。
月見をしている時はなるべく主をそっとしておいてあげたくて、会話をする時以外は少し離れた場所で読書をしたり他の刀達と会話をしたりもしている。
「まんば、とても逞しくなったね…」
「迷いが晴れたからな。今の俺はあんたのための刀だ、いつでも頼ってくれて構わない。
亥の刻だな、主もそろそろ部屋に戻った方がいい」
「…そうする。この毛布、持っていっていい?」
「ああ」
おやすみと言えば、主も微笑みながらおやすみと返して自分の部屋へ戻っていった。
はたから見たら月見だが、主がしているのはどちらかと言うと月光浴。
霊力を回復させるためなのはもちろん、自分自身を浄化させるためにしているのだ。
月光浴を終えた主は、すぐに就寝に入った。