第48章 脆弱
side 赤井
美緒の体を抱き締めながら
警察に事情を説明していると、美緒はいつの間にか
俺の腕の中で眠ってしまっていた。
顔を覗くと瞼は真っ赤に腫れており
口の端は犯人の男に殴られたのか血が滲んでいる…。
この教室に入って美緒を見た時、
下着が見える状態まで服が切り裂かれており
男達が明らかに美緒を犯そうとしていると悟った。
そんな状態を見た俺は、怒りで我を忘れ
本気であの男達を殺してやろうと思っていた。
俺の美緒に触れて…
ナイフを突き立てている様子を見たら
怒りを抑え切れず、目の前が真っ赤に染まったような感覚だった。
だが、犯人の男を夢中で殴っていた時
俺を止める美緒の声を聞いたら、俺はすぐに落ち付きを取り戻した…
俺に人殺しをして欲しくない、と思っているのか
美緒の声はとても儚く、俺の脳に直接響いた。
美緒が止めてくれなければ
俺は間違いなくあの男達を殺していただろう…
眠っている美緒に心の中で礼を言い
一通り警察に話し終わったところで
帰宅していいと許可をもらい、美緒の体を抱き上げた。
そのまま車が停めてある駐車場へ向かい
助手席に美緒を乗せ、工藤邸まで車を走らせた。
そして屋敷の中に入り
眠っている美緒をリビングのソファーに寝かせ、切り裂かれた服の着替えと傷の手当てを行った。
外傷は大した傷はなかったが
恐らく心の傷は相当深いものが出来てしまっただろう…
「美緒……すまなかったな…」
助けに来るのが遅くなってしまい
恐怖を味合わせてしまったことに対し、眠っている美緒に謝罪をし
こいつが少しでも安心して眠れるように
俺はソファーの近くに椅子を移動させ手を握った。
美緒の体温を感じていたい…
俺の体温を美緒にも感じて欲しい…
そんな気持ちで手を握りながら寝顔を見つめていると
美緒の体が身動ぎ、閉じていた瞼がゆっくりと開いた。