第48章 脆弱
「俺の美緒に触れた罪は重い、…覚悟しろ。」
「ひっ!ッ、うがっ…!」
バキッ
バキッ…
耳を塞ぎたくなるような
顔を殴る鈍い音が準備室に響いていて…
こんな風に誰かに怒りを露わにしている昴さんは
私も身震いするほどの怖さを感じた。
でも…
『す、ばるさ…ん……だ、め…』
震える声でそう呟いたけど
昴さんには聞こえてないようで……
すでに気を失っている男を殴るのをやめなかった。
このままだと昴さんが……
赤井さんが本気でこの男を殺しそうな勢いだったから
私は息を吸って、先程より大きな声を出した。
『っ、昴さん…!それ以上はだめです…!やめて!!』
「!!」
私の声が聞こえた昴さんは殴るのをやめて
その男から手を離し立ち上がって私の元に来てくれた。
『殺したら…だめ、です…
あかいさんにもう…会えなくなっちゃう…』
「っ、美緒…」
涙を流しながらそう伝えると
私の体に昴さんの上着がかけられ、苦しいくらいに強く抱き締められた。
「遅くなって…悪かった…」
『っ、ふ…ぇ……っ、怖かっ、た…ぁ…』
本当に殺されるかと思った…
2人の男達に犯されるかと思った…
抱き締めてくれる赤井さんの腕が暖かくて
私も赤井さんの背中に手を回し、彼の服を強く掴んだ。
しばらく泣きながら抱き締められていると
音楽室に警察の人が入ってきて、
私の代わりに昴さんが全て説明してくれていた。
その間もずっと
私の体を抱きしめ続けてくれた昴さん…
それでも私の涙と、体の震えはずっと止まらなくて…
助かったことによる安心感もあり
私はいつの間にか気を失ってしまった。