第48章 脆弱
「美緒……っ!!」
『す…ばるさ……』
助けに来てくれたことが嬉しくて
涙を流しながら彼の名前を呼んだ。
そして私のそばにいる男達は
昴さんが来たことで慌てている様子だった。
「お前達……俺の女に何をしている…」
普段は穏やかな昴さんの声だけど
雰囲気からもかなり怒っていることが伝わって来て…
この教室の空気が、一瞬で凍て付いた。
男達はそんな昴さんに怯えながらも
私の首元にナイフをグッと当てて来た。
「う、動くな…!!動いたらこの女を殺すぞ!」
「脅しじゃねーからな!?」
「…。」
昴さんは何も言葉を発さず、少しずつ私の元に足を進めた。
「っ、止まれ!!
それ以上近づいたらこの女マジで殺す!!」
「……さっさと逃げた方が身の為だぞ。」
「ど、どういう意味だよ…」
「聞こえるだろ?俺が呼んだ警察のサイレンの音が…」
耳を澄ませると、昴さんの言う通り
少しずつパトカーの音が聞こえてきて
この学校の駐車場に赤いパトランプがチカチカと光っていた。
「お、おい、やべーぞ…!」
「早く逃げねーと!!」
男達は逃げ出そうとして
私の首元からナイフを少し離した瞬間、
「!!ぐぁっ…!」
…昴さんは風の速さで動き
私にナイフを当てていた男の顔を手で突いていた。
「!?てめぇ…っ!!」
もう1人の男は昴さんに殴りかかっていたけど
簡単に拳を受け止められ、顔に足蹴りをされていて
そのまま後ろに倒れ伸びてしまった。
赤井さんが強いのは知ってたけど…
2人の男性を相手に一瞬で倒した事に驚いていると
顔を突かれた男性が、よろよろと立ち上がっていた。
「いっ、てぇ……この野郎…っ…!」
さっきの人と同じように
その男性も昴さんに殴りかかっていたけど…
その人もまた簡単に拳を受け止められていた。
「そんなに死にたいのなら…殺してやる。」
「!?っ、う…!!」
昴さんはその男性の顔を思い切り殴り、
床に倒れてからも馬乗りになって何度も何度も殴り続けていた。