第48章 脆弱
屋外にある喫煙所に辿り着くと
外はすでに日が暮れ、夜の空気になっていた。
懐からタバコを取り出しマッチで火をつけ
煙を口から吐き出す動作を繰り返していると
少しずつ気持ちが落ち着いてくるのを感じた。
しばらくタバコを吸っていると
喫煙所にいる俺の元に近づいてくる足音が聞こえ
顔を向けると、先程まで一緒にいたジョディが歩み寄ってきた。
「シュウ…本当にごめんなさい。私のせいで…」
「お前のせいじゃないと言っただろう。
だがあの男…相当お前に惚れ込んでいるようだから
二度とこんなことさせないように見張っておけ。」
「やっぱり……彼の気持ちに気づくわよね…
以前、交際を申し込まれたけど断ったのよ…
今は仕事に集中したいからって言ったわ。」
だがあのアーロン捜査官は
諦めきれずにジョディを想い続けて俺への気持ちを感じとったんだろう。
…だからと言って
それは美緒を傷付けていい理由にはならんがな。
「お前も分かっていると思うが…
俺は美緒のことが大切なんだ。
だからお前の気持ちには…これから先も答えることができない。
……悪いな。」
「ちょっと、なんで私が振られたみたいになってるのよ!
あなたと私はただの仕事の同僚!自惚れないで!」
「…そうか。」
俺が気にしないようにそう言っただけかもしれないが…
その言葉を聞いてジョディも俺と同じように
美緒のことを大切な奴だと思っているのが伝わってきた。
「それより美緒のこと…どうするのよ。」
「今は…あいつも混乱してるだろうから
落ち着くのを少し待とうと思う。」
本当はすぐにでも美緒の顔が見たい、
話がしたい……
だがこれ以上、あいつを泣かせたくないから
美緒の気持ちの整理がつくまで待つ。
右手にはめられた美緒からもらった腕時計を眺めながらそう決めたところで、
ジョディはそんな俺を見て微笑んでいた。