第48章 脆弱
ホテルに入り、聞いていた部屋に向かうと
すでに到着していたジョディが部屋の扉を開けてくれた。
「待ってたわ、入って?」
「ああ。」
部屋の中に足を進めると
黒髪の捜査官が1人、ソファーに座っていた。
…確か名前は……アーロン捜査官だったな。
「赤井さんまで来て……一体何の用ですか?」
「あなた、土曜日に美緒と話してたでしょ?
何を話していたの?」
「…。」
ジョディが尋ねてもアーロンは黙ったまま。
なかなか口を開かない彼に対して苛立ちを感じた俺は
アーロンに近づき胸倉を掴んだ。
「うっ…!」
「!!ちょっとシュウ!」
「美緒に何を話した……正直に答えろ。」
グッと手に力を入れると、
アーロンは苦しそうに顔を歪めていたが
そばにいたジョディに肩を掴まれ、手を離すように宥められた。
…そして解放されたアーロンは小さくため息をついた後に口を開いた。
「俺はただ…赤井さんとジョディさんが昔、
付き合ってたって事を話しただけですよ。」
「「っ、!!」」
確かに俺達は昔、恋人同士だった。
だがそれは5年も前の話で、美緒に話してはいなかったが
今は同じFBIの仲間として信頼している同僚だ。
「こんな事俺が言うのもおかしいですが…
ジョディさんはまだ、赤井さんのこと吹っ切れていませんよね?」
「っ…」
「……ジョディ、そうなのか?」
顔を向けてそう尋ねると
ジョディは困った顔をしていて、どうやら事実のようだった。
「ごめんなさい…
確かに完全に吹っ切れてはいないわ…。
でもシュウと美緒の関係を壊そうなんて思ってなかったし
2人の幸せを心から願ってる。
あなたとは…これからも一緒に働く仲間として付き合っていきたいと思ってるから。」
俺の目を真っ直ぐに見て話すジョディ…
表情からしてそれは本音だというのが読み取れる。