第48章 脆弱
『っ、あ……あの…ごめんなさい……!!』
悲しそうな声色で呟いた昴さんの声を聞いていられなくて
私は2人に頭を下げてから自分の家に向かって走り出した。
どうしよう……
どうしよう……!!
一晩中安室さんと一緒にいた事
絶対赤井さんに知られた…
安室さんとは何もなかったとしても
赤井さん以外の男の人と一晩一緒にいたのは事実…
絶対…絶対傷つけた…
怖くて怖くてたまらない。
昴さんに……
赤井さんに嫌われたのを受け入れるのが怖い…
震える足を無理矢理動かして走り続けて
何とか自宅のアパートまで帰ってきた。
『はぁ…っ、はぁ…』
痛い…胸が痛いよ…
どうしてこんなことになっちゃったの?
つい先日まで幸せな時間を過ごしていたのに…
『ふっ…ぅ……ごめん、なさい…赤井さん…』
私が弱いせいで…逃げてばかりでごめんなさい…
私はしばらく玄関に座り込んだまま泣くことしかできなくて、涙が枯れるんじゃないかと思うくらいひたすら涙をこぼし続けた。
ーーー…
ブーッ
しばらく玄関で泣いたまま座り込んでいると
鞄の中に入っているスマホが振動した。
電話ではなくメールのようで、確認すると
小林先生からの連絡だった。
[お疲れ様です。
明日、B組で行う予定の国語のテストですが
問題用紙に不備はなかったですか?]
『っ、忘れてた…!』
今朝、職員室で小林先生から
問題用紙に誤字脱字がないかチェックを頼まれていたことを
私はすっかり忘れていた…
USBを預かったから家でチェックしようと思って
鞄に入れたはずだったんだけど…
『嘘……ない…』
まさか…学校に忘れてきた!?
鞄の隅々まで探してみたけど見つからなくて
自分のドジ加減に苛立ちを感じた。
『テストは一限目って言ってたし…学校戻るしかないか…』
時計を見ると、すでに夜の7時を回っていて
こんな時間から学校に戻るのはとても憂鬱だけど
仕事を忘れていた自分が悪い……
仕事中も赤井さんのことで悩んで
ぼーっとしてる時間もあったから…
私は泣き腫らした顔のままアパートを出て
再び学校へ向かって歩いた。
…今日は絶対、厄日ってやつだ。