第48章 脆弱
「黙っていたら分からないだろう。
…どこに行っていたんだ。」
『…心配かけて…ごめんなさい…』
「言えないような所にいたのか…?」
言えるわけがない。
安室さんの家でぐっすり寝てたなんて…
実際寝てただけで何もなかったけど
そんなことを言ったら絶対赤井さんを傷付ける。
「……男のところか?」
『っ!!』
間違ってないだけに体がピクッと反応してしまい
そんな私を見て昴さんの雰囲気が怖いものに変わった。
「お前はもう…俺への気持ちはないのか?」
『違っ…!そうじゃなくて…』
「っ、じゃあなぜだ!答えろ!!」
昴さんの顔をした赤井さんは初めて私に怒鳴った。
昴さんの声だけど
確実に怒っているのが伝わってきて…
その迫力に圧倒された私は、後退りをしたけど
腕を掴まれて逃げることは許されなかった。
「美緒、早く話せ。」
『ご、ごめんなさい…』
「っ、謝るようなことをしたのか…!?」
『いっ…!!』
掴まれた腕に力を入れられて私は痛みに顔を歪めた。
『昴さ……痛いっ…』
怒りのあまり頭に血が昇っているであろう昴さんは
私の声は聞こえていないみたいだった。
『い、や……昴さん…っ…』
痛みと恐怖で目に涙の膜が張ってきたのを感じていると
私達の元に誰かが近づいてきている足音が聞こえた。
…そしてその人物は
私の腕を掴んでいる昴さんの手を掴んだ。
「嫌がっているじゃないですか…
早くこの手を離して下さい。」
『っ、安室…さん…?』
何で…この人がここにいるの…?
昴さんもそう思っているようで
とても驚いた表情をしていた。
「…聞こえませんでしたか?
美緒さん、かなり痛がってますよ。」
「っ…」
昴さんは安室さんにそう言われるとハッとして
掴んでいた私の腕を離してくれたけど…
強く握られていたから、私の腕は赤くなってしまっていた。
『あ、の…安室さん、どうして…』
「昨日の今日ですからね…
美緒さんが心配で学校まで迎えに行こうと思いまして」
「…昨日……?」
たぶん今の安室さんの言葉で
私が昨日の夜、安室さんと一緒にいた事が赤井さんは分かってしまったんだろう。