第48章 脆弱
学校を出てからいつもの退勤ルートを歩いて
自分のアパートへ向かった。
歩きながらも考えてしまうのは赤井さんとジョディさんのこと。
先日、書類を届けた時ジョディさんに会ったから
彼女も私の様子が変だった事に気付いていて
何かあったのかと心配してくれているメールが届いていた。
…いつも私に優しくしてくれるジョディさん。
でも私はそのメールに返事をすることが出来ないままでいる。
何て返したらいいのか分からなくて
メールの文章を読むと、また胸がズキンと痛んだ。
2人と話す勇気もなくて、メールを見るだけで
勝手に苦しんでる私って…どこまで弱い人間なんだろう…
どうやったら…強くなれるの…?
紗栄子と安室さんには後悔しないようにって言われたけど
今は自分のしたい事すらも分からない状態だった。
悩みながらとぼとぼ歩いていると
薄暗くなった道の先に、1人の男性が壁に背を預けて立っているのが見えた。
右手をズボンのポケットに突っ込み
左手でタバコを吸っていたその人は、私に気づくと
携帯灰皿に吸い殻を入れ、私の方へ向かってきた。
『……昴、さん…どうしてここに…』
「お前に会いに来た。」
『っ…』
会いに来た、と言われたら
いつもはすごく嬉しいのに今は素直に喜べない…
外にいるにも関わらず赤井さんの口調だったから
顔は昴さんなのに赤井さんにしか見えなくて…
この人のことが…どうしようもなく好き。
顔を見ただけで改めてそのことを実感したけど
何を話せばいいのかわからない。
私は黙ったまま昴さんの顔を見れずに俯いた。
「…美緒、昨日の夜はどこに行ってた。」
『え…?夜、って…』
「お前と話がしたくて家で待ってたんだが
朝になっても帰って来なかったからな…
心配していたんだ。」
『!!』
やっぱり…赤井さん優しすぎるよ…
私のことを心配してわざわざ家に来て
しかも朝まで待ったなんて…
でも……
どうして私のことを気にかけてくれるのに…
ジョディさんとホテルに行ったんですか…?
そう聞きたいのに聞けなくて
私は何も言えないまま口を閉ざすことしかできなかった。