第3章 追憶
囁いて名前の顔を見ると得意気に唇の端を上げてストレートでも私には勝てないだろうと言われた。
名前の身体を思えばあまり不思議な発言ではないが紅くなる頬や潤んだ瞳を思い出して本当に酔わないのか試したくなるというものだ。
沖矢「ショットでも構いませんが…そんなに自信があるのなら折角です。お好きなカクテルを作りますよ。貴方が1杯飲む度に、私は貴方の決めたカクテルを飲みましょう。」
名前「…なるほど。フレアはやらなくていいからな」
沖矢「分かりました」
俺が酔う事を前提に話され面白くなってくる。
名前は何にしようか考え込んでいるのかいつもの考える仕草をした。
名前「……Long Island iced tea」
沖矢「…挑戦的ですね…もう少し弱いものでなくて良いんですか?」
名前「2グラスで分けて飲もう。フェアだろ」
沖矢「…全く…」
ロングアイランドアイスティはジン、ウォッカ、テキーラ、ラムの4つの蒸留酒を使う25度以上のカクテルだ。
俺が用意していると名前は阿笠博士が隠していたと思われる戸棚からピスタチオを取り出し、木皿に乗せカウンターまで運んできた。
沖矢「博士に言わずに…?」
名前「哀ちゃんに言えば問題ないだろう?」
沖矢「…貴方は見ていて飽きない。面白い。」
出来たカクテルを差し出すと互いのグラスを鳴らした。
一口飲んで彼女の様子を見るべく視線を戻すと名前はグラスを傾け、空になったそれをカウンターに置いた。
沖矢「……“味わって”下さい」
名前「美味しい。次、London Back.20度以上で」
ーー聞いてないな…ーー
自分のグラスを急いで空にして指定された“ジンバック”を2杯分で作った。
名前が一気飲みで片付けさせない為に多く作ったがそれを不服そうに見られた。
名前「…作ってくれるっていうから色々飲みたいのに。」
沖矢「急いで飲まないと仰って下さるなら。」
名前「分かった。ゆっくり飲むから。」
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