第3章 追憶
手を広げて見せ、呼び止めるとそいつは立ち止まってくれる。
沖矢「この先で変わった子を見ませんでしたか?」
××「ああ、居たよ。バグかと思った子だけど」
沖矢「この先ですか?」
××「そうだね。まだ居るかも」
沖矢「ありがとうございます。」
××「あ。あの子、五感が無いから気を付けて」
沖矢「……ご忠告どうも」
“五感が無い”か…俺でさえこの状態が気持ち悪く感じる。
もし名前が五感を持った状態だったらこの世界を気に入ったとは思えないな。
座り込む名前らしき姿を捉え、急いで戻ろうとする。
だが彼女はパニック状態で手足を動かしている。これでは、まともに動けない。
無理矢理でも担ぎながら内側へ戻ろうとしているとさっき声をかけた彼がやって来た。
××「これを使え!」
沖矢「!」
投げられたカプセル状の物は瞬時に広がり、人が1人、入れる大きさに変化した。
真ん中にあるボタンのようなものを押すと蓋が開く。
動き続ける名前を抱き止め、動きが鈍った所でその中へ押し込んだ。
その籠を彼は引っ張り易い様に紐をつけた。
××「!…まずいな。巡回が来る」
沖矢「!…急ぎましょう」
明らかに警備システムというような格好をしたアカウントが急接近して来る。
あれが少女が言っていた“ウィルススキャン”だろう。
タイムリミットが近い事が分かる。
沖矢『彼女を見つけ、カプセルに入れました。安全域まで退避します』
××「…」
急がなければ、名前は消される
此処で消されたら、名前は“戻れる”のか?
戻れたとして、それは大丈夫なのか?
そんなに安全なものじゃ無いだろ
ーー必ず、連れ帰るーー
××「!」
沖矢「…」
極端に速度が速くなり、閉じかけていた反動基板同士の間を安全に通り抜けられる位置になった。
振り返ると彼が少し間に合うか分からない所にいる。
沖矢「手を!!」
××「!…サンキュー!」
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