第2章 契約
嘗て自分もそうだった様に松田も驚いている。
そっくりなんてレベルじゃない。彼は肌と髪の色が違う本人にしか見えないからだ。
名前「…本人が望む様に合わせてやれ。それから、似てる事が理由で殴りかかってくる事が有れば“何を使っても構わん”。…肌が爛れる事と使い物にならなくなる事以外は。」
フィル「そんな事しませんよ。…多分。」
ーー確信を得ないのか…ーー
名前「…フィルが直せるならそれで良い。」
フィル「もし直せなかったら“戻って”頂けますか?」
名前「フィル…私はもう“コイツの為には2度と戻らない”」
フィル「!……了解しました」
フィルは半ば冗談で言ったんだろう。だがそれは彼女の苛立つ部分を逆撫でた。低い声と鋭さのある目付きをフィルに向けるとフィルは事態を把握したようで“了解”と言った。
松田「…なぁヒロ」
「ん?」
松田「俺はコイツに“生かされてる”のか?」
松田がオレに小声で話しかけてくる。顔を近付けて小声で対処すると難しい質問を投げかけられた。
“生かされてる”とは言えないだろう。実際は“死んでいる”のだから。
かと言って“死んでいる”とは言えど、今目の前で松田は“生きている”訳で。
一種のループする思考に陥るとフィルが松田に対して声をかけた。
フィル「…松田は“救われた”だけで、その代償が後の時間だと捉えると良い。」
松田「……俄かには…信じ辛いんだよ。」
名前「…」
司令は左手の甲に右肘を置き、右の人差し指を曲げて自分の唇を触りながら何かを考え始めた。
何かを察しているシオンは着替えてくると言うと医務室を出て行った。
名前「よし。」
考えが纏まったらしく顔を上げた名前はフィルに向かい、松田がいつ頃身体を動かせるかと尋ねた。
フィル「今すぐでも起こせますが?」
注射器を並べているバットへ、ホテルかどこかの案内スタッフの仕草を真似ながら手の平を見せた。
それと同時にオレと、恐らく松田にも、
“降谷零(ゼロ)が危ない物を持っている”という錯覚が生まれた。
名前「なら起こしてやれ。不便だろうからな。」
フィル「了解。」
松田「…フハッ」
フィル「…」
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