第2章 契約
ヒロ「かくいうオレも、“死んだ”んだ。
でも、彼女が助けてくれて。2、3年くらい時間が経過してるって事は大分後に知ったんだけどな。」
「……」
ヒロ「受け入れ難いのは分かるよ。でも、オレらが人に見つかったら不味いって事は理解出来るよな?」
ーー理解…?…出来る訳がねえ。ただ分かるのは、あの場所に居たら殉職してただろうって事とあの女が俺を罵倒した事だ。ーー
名前「起きたのか。」
視線を向けると観覧車の中で見た女が濡れた髪のままタオルを首に掛けて立っている。
ヒロは席を立ちながら女に身体を向けた。
ヒロ「今説明終わったところ。」
名前「信じたのか?」
ヒロ「…どうだろう…」
「…俺が分かってんのは…あの場所に居たら死んでただろうって事と、お前に罵倒された事だけだッ!! 」
突然、黒いズボンを履いた脚が顔面に振り下ろされる気配がした。
身体がまだ動けない為、目を瞑る。
名前「シオン。やめろ。」
シオン「…」
シオンと呼ばれた執事はその長い脚をゆっくり下ろした。
俺を見る時だけ眉間と鼻の付け根に皺が寄っている。
名前「…君には忠誠心が無いと判断している。だから2度と、君の命を…“拾いに行ったりしない” …強いて言うなら…死を長引かせている間、多くを救え。 配属先は幾らでもある。」
不適な笑みを浮かべる様に口角をニヤリと上げて俺とヒロを見てくる。
「お前が俺を勝手に連れて来といてよく言うぜ。あの時死ぬ運命だったってんならそのままの方が良かったんじゃねえのかよ?!」
言い終えると同時くらいに彼女は俺の顔、真横に短剣を突き刺した。
頬に何かが伝うと、ヒリヒリとした痛みを感じた。
名前「…言った筈だ。“お前を生かす理由が何処かにある”のだと。……それと、お前は知らない。…“独り、そこに残される側の気持ち”を。……お前があれを“運命”と言うなら、私が助けたこれも“運命”だと捉えろ。」
視界から外れている所為で顔は見えないが声は真剣そのものだった。
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