第8章 因果呪縛を解く
大きく胴体を曲げた大百足の牙が向かってくる。
再び口の中に呪力をぶつけ、怯んだ脇を駆け抜けて左側面の脚をまとめて切り落した。
しかし、脚はすぐに生えてくる。
頭部、胴体に衝撃反射の術式、脚にはその術式はない。歩く時に邪魔になるからだろうか?
電撃は反射されないことから察するに衝撃反射特化型。
呪力主体で叩き続ければいずれ祓える。
問題は……
「強い術師だァ。呪力も豊富、ますます喰い甲斐がある」
「どれだけ頑丈なのよ」
大百足が受けた電撃は人間だったらとっくに全身が内臓含めて大火傷しているレベルだ。
にもかかわらず、この呪霊は動きが鈍る程度の上に嗤う余裕まである。
伽那夛の脇を通り抜けて逃げようとする低級呪霊を漏れなく祓いつつ、思考する。
呪霊の弱点は大体頭か心臓、虫には心臓がないからこの大百足でいうと頭部だろう。
頭部に高圧電流を流すには……
「やっと止まったァぁ!」
伽那夛が動きを止めたのを見るや否や大百足が顎を開いて迫ってくる。
伽那夛の方は逃げるでも避けるでもなく、ただ不敵に大百足を見据えていた。
毒牙が伽那夛の頭に触れる……その直前、
バチバチィッ
「あぁアアッ!?」
大百足の右牙が吹き飛んだ。
毒と体液を撒き散らしながら重い音を立てて落ちた牙を眺め、伽那夛は少し残念そうに小さくため息を吐く。
「……やっぱり頭ごとは飛ばないわよね」
今使ったのは御三家に伝わる秘伝・落花の情。
触れるものに対してカウンターで呪力を放出する呪力操作プログラムだ。
伽那夛の場合は放出される呪力が電流になるため、放出する呪力を強くすれば相手に大きなダメージを入れられる。
こちらを食べようと向かってきた瞬間のカウンターで頭部を飛ばせるかと思ったが、牙の強度が保たずにそこだけ弾け飛んでしまった。