第8章 因果呪縛を解く
日が完全に落ち、街灯もない山中は月明かりがわずかに照らすのみとなっていた。
木々の影が深い闇となり、その暗闇を切り裂くように青白い雷光が幾筋も走る。
「はぁ、はぁ……」
伽那夛は肩で息をしながら、呪霊を祓い続けていた。
あの後高専に連絡できたものの、近場には術師がおらず、現場が山奥なこともあって応援は早くても1日後という回答だった。
1日……早くても明日の夜……
それまで食い止めるにはどうするか。
疲労で鈍る頭で懸命に考える。
もう何百匹祓ったか分からないが、今のところ逃した呪霊はいないはず。
湧き出す呪霊の勢いは強まっていないが、弱くなった訳でもない。
このままでは物量に押し負ける。
呪霊の発生源である穴を叩いて根こそぎ祓おうにも伽那夛の呪力特性では地面に電流が逃げてしまうため、ほとんど無効化される。
高専経由で村には避難指示を出してもらったが、果たして指示のみでどのくらいの住民が避難するか……
この無数の呪霊を生み出している親玉がいれば手っ取り早いのに……
終わりの見えない中、祓い続けて更に数時間、
徐々に穴から出てくる呪霊の様子が変わってきた。
あぎゃアァァッ
ヤメテェこナいでぇぇッ
なんデ、おれガ、おレがアぁっ
痛イィッ
来ナイで、食べなイデ
少し前までとは明らかに違う。
どの呪霊も恐怖に顔を歪め、必死に逃げようとしている。
中には腕や足が欠けているものも。
一体、何から逃げている?
「まぁ、逃さないけどね」
1匹残らず祓いつつ穴に視線を移すと、奥から強い気配が這い上がってくるのを感じる。
これまでとは異なる呪霊の気配だ。