第4章 再会の時間
『(ひ、ひつじって私のこと…?)』
その疑問を彼に聞く前に彼は私達の間を通って行った
「わ、あれが例の殺せんせー?ホントにタコみたいだ!」
「赤羽カルマ君…でしたね。今日は停学明け聞いていますが…
登校初日から遅刻とはいけませんねぇ」
先生が顔にばってんを表して叱る
「あはは、ごめーん。生活リズム戻んなくて…
下の名前で気安く呼んでよ、とりあえずよろしく先生」
「こちらこそ。楽しい一年にしていきましょう」
差し出された手を先生が握ると手が液体のように溶けだした。何事かと思う隙も無く彼はすぐに手首からナイフを取り出し先生を刺し殺そうとする。間一髪で先生は彼から距離を取った
喧嘩は強かったけど…これは…
「へーホントに早いしホントに効くんだ、このナイフ。試しに切って手に貼ってみたんだけど
けどさぁ先生。こんな単純な『手』に引っかかるとか…しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビり過ぎじゃね?」
煽り…これも彼が良く使う手。彼は率直に言って人を動揺させるのが得意だ。それは案外単純な殺せんせーに効かないはずはない
「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど」
「!」
「あッれェ、せんせーひょっとしてチョロイひと?」
肌に血管が浮き出ていて怒っていることが分かる。だが、かつて激怒したときに比べればまだまだいい方だとみんなは悟る
「ねえ、渚。私E組に来てから日が浅いからわからないんだけど彼ってどんな人?早稲田さんもなんで知ってる…というか知られてるの?」
「……うん、一年二年が同じクラスだったんだけど。二年の時続けざまに暴力沙汰で停学食らって。このE組にはそういう生徒も落とされるんだ」
『私も一年で同じクラスだった。それだけなんですけど…まさか認知されていたとは…正直私も驚きです…
けど、その時はまだあんな感じじゃなかったはず…』
「でも、今この場なら優等生なのかもしれない…」
「どういうこと?」
「凶器とか騙し討ちなら…多分カルマ君が群を抜いてる」
気まぐれに彼が動かすナイフはまるで生きているよう。
彼なら…本当に殺すことができるのかもしれない