第21章 雛から小鳥へ、本丸を継ぐ
入れ違いで手入れ部屋から山鳥毛がやってきた。
「あ、山鳥毛…手入れは終わったの?」
「ひな…小鳥だったな。あぁ、済んだよ。」
「雛鳥でいいよ。私もその呼び方の方が好きだし。」
「じゃあ、今は甘えてそう呼ばせてもらおう。
いつか立派な部領(ことり)になった時に小鳥と呼ぶことにする。」
山鳥毛は私の隣に座ると私が眺めていた桜を見る。
「今年も立派に咲いたな。」
「うん…そうだね。…傷はもう平気なの?」
「あぁ、一晩寝たら良くなった。」
「ごめんね…私の采配ミスで怪我させちゃった…。」
「心配することは無い。
私も油断していたんだ。これから上手く立ち回れるようになればいい。
それに君があの時、私たちに叫んで教えてくれたから大した傷をせずに済んだんだ。
感謝している。」
山鳥毛は大きな手で頭を撫でてきた。
優しくて大きな温かい手。
なんか、ここに帰ってこれたんだと実感した。
「ねぇ、山鳥毛?」
「どうしたんだい?雛鳥。」
「山鳥毛はいなくならないよね?」
山鳥毛は驚いた顔をしていた。
そして瞬時に優しく微笑むと私の手を握った。
「小鳥となる君も私が守ろう。
私がいなくなっては小鳥を守れないからな…
いなくならないよ。」
あの時の言葉だ…!
私はすぐにわかった。