第21章 雛から小鳥へ、本丸を継ぐ
お父さんが隠居を始めたのはその年の春だった。
みんなは最初驚いていたし、お父さんを止める刀剣男士もいた。
だけど私が一人前の審神者に務まるまでは傍にいて、みんなと過ごすからと説得して今に至る。
現世との関わりを完全に断つのは気が引けたので、お父さんほどでは無いけれど現世にて週に一度アルバイトをしながら立派な審神者になろうと奮闘する。
ある日の任務。
私は鍛練にと遡行軍が出た時代に彼らを送ったが采配に誤りがあり、山鳥毛や南泉たちに怪我をさせてしまった。
実力不足で落ち込んで座り込む私を見たお父さんは、縁側に座り庭にさいた桜を見ていた。
話を切り出すのが苦手なのか保育資格の話をしてくる。
「せっかく保育士の国家資格頑張ったのに、本当に審神者になるとはな…。仕事には慣れたか?」
「ううん…お父さんみたいに上手く策を練るのにはまだ慣れないかな…。
やっぱりすごい仕事なんだね。」
「ハハハ。だろ?簡単に務まれちゃ困る。」
「うん。私も、もっと頑張ろう…。」
「大丈夫、俺なんか審神者になりたての頃は加州たちに無茶させてよく怒られてたもんだ。
『俺たちを折る気なのか!?』って。」
「加州が怒ってたの?」
「あぁ、ものすごい形相でな」
懐かしむように笑うお父さんは、誰かがやってくるのに気がついて立ち上がった。
「じゃあ俺は、もう少しお前の業務がやりやすいように書類や資料を纏めるから。
おう、加州。いるか?ちょっくら手伝え〜!」
遠くで加州がえーと渋る声がする。
お父さんはそのまま執務室へと向かった。