第21章 雛から小鳥へ、本丸を継ぐ
覚えてくれていたことが嬉しくて涙が溢れる。
こんなに嬉しくて仕方ないのは初めてかもしれない
泣きながら大好きな彼の名を呼ぶ
「山鳥毛…」
「あぁ、どうした?私の雛鳥。」
「山鳥毛、大好きだよ。」
思いが溢れるとはこういう事なのかもしれない
気持ちが溢れて涙になり振り絞って言葉となる
山鳥毛は隣に座り直して私の肩をそっと、でもしっかりと掴んだ。
まるでこぼれやすいガラス細工を扱うように優しく
「ひ…いや、小鳥…私を見てほしい。」
少しすると山鳥毛は私をじっと見てきた。
サングラスが外されたその瞳はとても赤く真っ直ぐに写る。
優しい春の風がいたずらに山鳥毛から香る、あのお香の匂いを纏わせた。
「私は、君を…………」
山鳥毛の言葉や気持ちは私のよりずっと深く、ずっとずっと慈しんでいた。