第16章 夢の中の彼と香りの記憶
でも、私にはそんな心配かけるような彼氏もいなかった…。
「………なんか、ダメなんですよね。
誰かとお付き合いしようとすると、無意識に誰かを探している気がして。」
「誰かを?それは…?」
私は首を横に振る。
「それこそ、夢に出てくる人を探すような…雲を掴むような話ですよ。」
溶けかけのアイスを掬って口に運んだ。
「こんなこと、ちょもさんに話しても困らすだけですけどね。」
「良ければ聞かせて貰えないか?」
ちょもさんの口調があまりにも優しくて私は戸惑った。なんで聞いてくれるんだろう?
「現実味がないですよ?
ほんとに夢物語みたいな。」
「君の話を聞くのは嫌いじゃない。
どんな話でも聞いてみたいものだ。」
優しさに甘えた。
「高校生の頃に2回ほど男子と付き合ったことあったんですけど…私が上の空になっちゃうんです。
告白されていいよとは言うんですけど、心ここに在らずになりがちで愛想つかされちゃって…。」
「好きな人が出来たことは?」
私は首を横に振った。
「出来たことないですよ。
あとその誰かを探してるのか、似てるかもしれないと思う人とかはいましたけど。
やっぱり違ってて、知らないはずの誰かを重ねては怒られて。
人間なってないですよね。」
苦笑いを浮かべて私はため息を吐いた。