• テキストサイズ

えびまるの短編集《文スト》

第2章 試行錯誤 (太宰治)



ふわっ…
風が止んだ
違う、私に風が当たっていないんだ、

え、…?

『あ、の、…?太宰さん?…え、と、』

頭が追いつかない

なんでだろう、でもいつもと違う
ふざけて抱きしめられたことなんて何度もあった
でもどうしてだろう、太宰さんの真剣な表情を見たせいか、すごく…緊張?焦り?…

「しばらくこうしていてもいい?」

『え、あ、はい…』

彼氏って何、とか、あれもしかして私の聞き間違いで本当は太宰さんに彼女がいるって話だったっけ?とか
こんがらがって何も出てこない

冬なのに暖かくて

「ごめんね、月宮ちゃん」

太宰さんが離れた
私の身体はまるで寒さで氷ったように動かない

太宰さんは屋上のドアに手をかける
見たことない顔

太宰さんが本当に居なくなっちゃうような気がして
急いで引き止めなきゃって

『太宰さん…!』

自分でもびっくりするほど声が出た

「何?あまり私を勘違いさせない方がいいよ、君を連れ去ってしまうかもしれない」

言わなきゃ
彼氏って何ですか、ではない
連れ去ってくれるなら本望です、でもない

ずっと言いたかったこと
言うのは良くないかもしれないけど仕方がない
だって抑えられないんだもん


『太宰さん、私』









『太宰さんの好きな人が知りたいです』


「………は?」

『知りたがりが良くないのはわかっています…でも教えてください』

一番聞きたかったこと

これを聞く私は卑怯なのかもしれない

でもやっぱり私に告白なんてする度胸はないんだ

「あははっ、月宮ちゃんには敵わないね…


…誰の名前が聞きたい?」




え?…嘘、そんな返し方ありなの??!え、どうしよ、なんて答えれば、うーん、、

それは当然…

『………私、の名前』

「私の好きな人は君だよ月宮ちゃん」

まさか当てられてしまうとはね、と笑う太宰さん

『…』

「君そういう?浮気が趣味みたいな?」

『あ!、その…彼氏って何ですか』

「え?」

『私、彼氏いないんですけど…』

「中也がいるじゃあないか…」

『え?…』
/ 26ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp