第1章 交わる二つの世界
2話「人生そう上手くはいかないよね」
船に運ばれ袋から牢屋へと閉じ込められた真弥はずるずると床に膝をつく。自分以外にも捕らえられた人はたくさんいるようでこれからどうなってしまうのかと不安に駆られる。
牢屋の中は決して綺麗とは言えずジメジメしており薄暗い。
綺麗好きというほどではないが清潔感は人並みほどあった真弥にとって汚く異臭のする此処はまさに最悪といった場所であった。
おまけに出される食事もパンはカピカピ、スープは泥水のような不味さといったざまだ。
自分は果たしてこんな場所で耐え切れるのだろうか。
しかしながら映画でよく見るような暴力を振るわれることもなく食べ物を与えられるだけマシであった。
それでも重苦しい場所と不味く栄養が偏った食事に、真弥は自分がどれほど恵まれた環境にいたのかと両親に感謝した。
この時真弥は自分に起きた出来事を改めて夢ではないと感じたのだった。
そんな生活が1週間少し続いたある日のこと。
船内が大声で叫ぶ声や慌ただしく走り回る音でいつもより騒がしい。騒ぐのが好きな海賊である彼らでもこんなにガヤガヤとしていることは今までなかった。真弥たちは様子の違うやつらに不安を抱く。
そんな時、ドカンッ!と大きい物音が響き船が大きく揺れ、船内は更に混乱を招く。
「クソ!全然効かねえぞ!このままじゃ船が沈んじまう」
「こんなデカい海王類がいるなんて聞いてねえよ!」
怒鳴る船員の中でそんな声が聞こえてくる。どうやら大型の海王類にあたってしまったらしい。
そんな会話にどうしようと牢屋の人たちは酷く心配した様子だ。真弥は海王類など見たことも聞いたこともなかったが未知の生物だからこその恐ろしさがあり周りの様子も相まって狼狽る。
特に気分の悪い真弥にとってこの出来事はまさに最悪であった。
元々真弥は船に乗ったことは一回もなく今回が初めてでこの1週間は船酔いが酷く顔色の悪い日が続いていた。その上に今回のこの騒動だ。具合の悪さに拍車がかかり真弥の顔は真っ青だった。
そんな様子を心配してか同じ牢屋に入れられていた女性は彼女に声をかけるがあまりの事の多さに頭が回らず真弥に声は届いていないようだ。