第1章 交わる二つの世界
1話「トリップはトリップでもそれは違うトリップじゃねえかァァァ!!」
それは重たいトランクケースを引きずりながら空港に向かう途中であった。
電車に乗った真弥は揺れる車内についうとうと眠たくなってしまい意識を落としてしまう。幸いにも空港行きの駅は終着であったため寝過ごすことはなかった。
目的地である駅に着いたと同時に起きた真弥はまだ少し眠気の残った頭を必死に動かしかながらも電車から降りようとする。
しかし車内から足を踏み出したその時、ジェットコースターに乗ったようなふわっと浮き上がる不思議な感覚が身体中を刺激した。
突然の出来事に驚いた真弥は「きゃ!」と悲鳴を上げる。
不思議な感覚はすぐに消え、バクバクと速くなった心臓が落ち着いたのを確認すると下がっていた視線を上げた。
しかしそこにあったのは空港の元寄り駅などではなく見知らぬ駅と街並みだった。
唖然とした真弥は目の前に広がる綺麗な海をぼんやりと見つめるがぽーっと鳴る汽笛に我に帰りそのまま列車が何処かへ行くのを眺める。
「お客さん?ずっと突っ立ってどうしたんだ」
「あ…す、すいません」
小さくなり見えなくなった列車から顔を背け立ち竦んでいた真弥は駅員に怪訝そうに話かけられる。
その表情が何処か自分を追い詰めているように感じた真弥は足を急かしそこから逃げるように飛び出した。