第4章 白梅と月夜の友人
「待て!白梅を渡せ!教育し直してやる」
追いかけてくる憲伸から逃れるため全速力で走り、白梅の所まで来た。木の幹の空洞に隠せるかもしれないと思ったからだ。
必死だったから、何か不思議な力を頼りたかったのかもしれない。その時のひなたは、白梅を憲伸から守る事で頭が一杯だった。
愈史郎に、白梅には近づかないように言われていたのに、幹を覗き込んだ。ひなたの目に映っているのは幹の中に渦巻く流星群だ。
夜の闇の中では、流星群は昼間見た時よりも輝きが増していて、渦巻く光はピンクや紫、金色の光る粒を幹の周りに水飛沫のように撒き散らしていた。砕いた宝石のような光のカケラが周囲に溢れる。
言葉が出ない程の美しさで息を飲んだ。
愈史郎は悲しみと言っていたけど、ひなたの目には輝いた煌きが、泉から湧き出る愛に見えた。純粋で清らかで、恐れを感じない。
白梅を、木の幹の中に納めた。流星群は白梅を吸収するように光の中に飲み込む。
光の煌きはひなたの腕に輝きながら触れた。まるで肘までの宝石で出来た手袋のように纏わりつき、腕が光輝いた。
「何してるんだ!空洞の中に入れた白梅は⁈ 」
憲伸の目には光の渦が見えていないようだ。
「あれ…?確かに入れたのを見たのに…暗い穴しかない!根の方に落ちて行ったか」
幹の中に腕を肩まで入れ探る憲伸は、幹の中を覗き込んだ。
瞬間、憲伸の身体は幹の中に引き込まれた。
「わっ!! 」
という声が、まるでトンネルの中から響いているように遠くから聞こえた。憲伸の身体は消えた。一瞬過ぎてひなたにもどうしようもなかった。
幹を覗いたひなたには、キラキラの渦巻く宝石の光しか見えない。
「あっ…」
光の輝きは七色の宝石の輝きを散らしながらひなたの身体を取り巻いた。頭からつま先までが光の中に包まれていく。