第4章 白梅と月夜の友人
「おじいちゃんの家、久しぶりに来たなぁ」
足元に敷き詰められた玉砂利をザグっと踏み締めながら呟いた。
産屋敷輝利哉の屋敷は、明治時代に建てられた日本家屋である。
立派な門扉と、周囲をぐるりと石垣に囲まれた大邸宅だ。千坪を超える敷地には、庭園と美しい渡り廊下が続いていて、渡り廊下からは鯉の泳ぐ池が間近に見える。近くの水源から引いた清らかな水が敷地内を流れていて、水路にかかる石造りの橋と人工の滝が素晴らしい。
橋から流れる水を眺めると格別だ。
この家と同じような造りの屋敷が幾つかあったと聞いた事がある。大正の時代、その中の一つは、おじいちゃんのお父さんとお母さん、妹達が住んでいた。
この家にいたおじいちゃんと二人の姉妹は、ずっとこの家に住んでいて、くいなとかなたは、ここからお嫁に行った。
三人で暮らした家に、おじいちゃんは一人になって、この家で小さな学校を始めた。普段、学校に行きたくても行けない人や、自由に勉強をしたい人にその場所と機会を提供した。
おじいちゃんは非常に頭脳明晰だったので、色々な事を教える事ができた。学業以外にも礼儀作法や世界情勢など、協力者と共に教えなから生徒さん達を育ててきた。
今でいうフリースクールのような場所を、自分の家で始めて、50歳を過ぎた頃に結婚したおじいちゃんは子供を授かった。それがひなたの父だ。
気持ちが良く晴れた庭園を歩いていると、今日も自由にそれぞれのやりたい勉強をしている生徒さんの姿が見える。
庭の木を写生している子、カメラで輝く水辺を撮っている人、剣道をしている人もいる。年齢も10代を中心に、たまに大人も混じっている。