第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
ひなたは身震いした。あの鬼を見ていると、ひなたの事を襲った鬼の姿が急にフラッシュバックした。
「…いや…!! 」
身体に黒い線の入った青い鬼だった。ひなたに触れ、少しずつ服や身体を傷つけた鬼…、
反射的にひなたの身体はこの場を逃れようとした。元来た道を引き返そうと焦る心が走りだす。
「ひなた」
瞬間、杏寿郎にぐいっと引っ張られ、勢いよく師範の胸に転がり込んだ。
隊服に押し付けられ、息ができない。
「…大丈夫だ。俺がいる」
耳元で響いた声でハッとする。無理矢理、忘れようとしていた心の傷が、あの恐怖が再びひなたに襲いかかる。
「あの鬼が…また来る…あの青い鬼…」
杏寿郎の胸の中で震えながら泣いた。思い出したくないのに、背格好が少し似ているだけで苦しくなる。
ひなたの頭に杏寿郎の手が乗った。
「君を襲った鬼は、見つけたら俺が必ず討つ。ひなたが俺に教えてくれるな? 」
ひなたは顔を上げ、杏寿郎を見る。
「…煉獄さんが…あの鬼を?…」
杏寿郎はひなたの目を見て頷いた。
「約束だ。ひなた。今、俺がしなければならない事をさせてくれないか」
ひなたの気持ちを分かってくれている。そういう目をしてる…師範は。
「…誰も、私…と同じ思いをして欲しくないの…」
杏寿郎を見上げ、涙を流すひなたの瞳から目を逸らさず、師範は頷いた。
「君のその優しさが好きだ。ここで待っていてくれ、すぐ終わらせる」
杏寿郎は素早く動くと、暗い山道を一息に降りた。鮮やかな抜刀の仕草、そして杏寿郎に気がついて大きく上から襲いかかろうとした鬼に、下から斬り上げた。
「炎の呼吸 弍ノ型 昇り炎天!! 」
真っ赤な炎が円を描いている。烈火の如く燃え盛る炎は弧を描き、2メートル近くありそうな鬼の身体を引き裂いた。
その間、僅か一二秒。目を開いていないと、一瞬で終わってしまう程に、師範の動きは速く、太刀筋は鮮やかとしか言いようがなかった。