第7章 ※ 鬱金香のピンクは愛の芽生え
部屋が朝の光で少しだけ明るい。昨日乾かしていた服に触れ、ほぼ乾いているので取り上げた。
煉獄さんの方を見ると、ひなたに背中を向けて眠っている。
音をさせないよう気をつけて着る。昨夜は一糸纏わぬ姿だったので、下着を着けるとホッとした。
煉獄さんにはもう少し後に起きて欲しい。今はなんか恥ずかしくて話せそうにないのだ。
ひなたは庵の外に出てみた。昨夜の嵐は去り、雨の痕跡も残っていない。どんどん明るくなっている視界には、狭霧山の爽やかな夏の朝が始まろうとしている、美しい空気に包まれた森の景色が広がっている。
深呼吸したくなる程に澄んでいる。
この景色を見ていたら、今の今まで悶々としていたひなたの思いが、さっぱりと消えていくみたいな気がした。
嵐は去り、今日は晴れている。
「よし、今から呼吸の練習してみよう! 」
目を閉じて、スゥゥ、と大きく息を吸い込む。昨日、師範に習ったように、身体の隅々まで空気を送り、筋肉の筋まで行き渡らせる。
そんなイメージを繰り返しながら、木々の中で集中してみる。
そのうちに走りたくなってきて、木をすり抜けるようにして走った。舗装もない山道を、普通なら走れないだろうけど、スイスイ駆け抜けて、いち、に、さん!
とリズムをつけると、さんの時に跳躍している。
かなり気持ちよくて、止まりたくなくて走り続けた。
呼吸の続くまで、走ってみたくなった。