【SLAM DUNK】さよならロストジェネレーション。
第2章 #2:問題児軍団
赤木君がこの後の練習内容を部員たちに伝える。
どうやらミニゲームをやって今日は終わりのようだ。
私はまだ初心者である桜木君のところへと赴き、基礎練習に付き合うことにした。
「む、あなたは確か……」
「安西だよ。監督の娘」
「おお、さんっ」
人懐っこい笑みを見せる桜木君。
犬だ、これ。
真っ赤な大型犬だ。
そのリーゼントをわしゃわしゃしたくなる。
彼は今、自分の出番がくるまでドリブルの練習をしているようだ。
基礎練習がつまらないと口を尖らせる彼は、まるで昔の私みたい。
「ドリブルするときは、腰を落として重心を低く保つ。重心を下げることで自然と両手と床の距離が近づくでしょ。ボールが手から離れる時間を減らせば、相手はボールをカットしづらくなるの。一回私やってみるから桜木君、私からボール奪ってみて」
私はまず、腰を落とさずにドリブルをやって見せた。
桜木君は戸惑いながらも簡単にボールを弾いて奪い取った。
「これは駄目なドリブルね。じゃあもう一回、私からボール取ってみて」
今度は腰を落として重心を低く保つ。
「ぬ……、と、取れん……」
「カットしづらいでしょ」
眉間に皺を寄せる桜木君はタイミングを見計らってボールに手を伸ばすが、そう簡単に奪い取ることができない。
「腰を落とすことで、カットしづらくなるし、前傾姿勢になるでしょ。すると足に力が入るから動きも鋭くなる」
「た、確かに……!!」
「じゃあ、桜木君。腰と重心を意識して保ちつつ、私からボール取られないように頑張ってみて」
桜木君がミニゲームに参加するまでの時間、私はただ彼とドリブルの練習ばかりしていた。
そのおかげか、彼の動きが随分とスムーズに且つ鋭くなっていた。
「元々、ドリブルはできてたしね。私が教えたのは+αってところかな」
隣でスコアを取る彩子ちゃんにだけ聞こえる様にそう呟いた。
指導者がよければ選手は伸びる。
私くるまでの間、桜木君に基礎を教えていたのはきっと彩子ちゃんだろう。
少し照れくさそうに笑う彼女の表情がそれを物語っていた。