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【SLAM DUNK】さよならロストジェネレーション。

第1章 #1:おもしろいチーム




2年間、アメリカに渡米し先月久しぶりに日本に帰国した。
桜の花はまだ蕾のままで、だけど気温は少しだけ温かい。
ああ、母国に帰ってきたのだと実感したのが今じゃ懐かしい。

「大学に行くの辛い~。朝早すぎ~」

大学に入学し早2週間。
怠惰な生活を送ってきた日々とおさらばし規則正しい生活を送っているのだが、これがまた辛い。
眠たい目を擦りながら私は食卓に並んだ朝食を口に運ぶ。
白米、納豆、目玉焼き、味噌汁と言ったザ・日本って感じの朝ごはんは向こうとは違ってヘルシーで美味しい。

「何言ってるの。早く準備して学校に行きなさい」
「中学生の頃によく聞いたセリフだ~」

大学に行くと決めたのは自分だけど、まさかこんなに朝早いとは思わなかった。
高校の時と何も変わらないじゃないか。

なんて思いながらも私は朝食を全て平らげ家をでた。
自転車で大学に通う途中にストリートコートがある。
まだバスケをやっていたころはよくそのコートで練習をしていたなとノスタルジーに浸っていると、地面に転がる見慣れたボールを見つけた。
今日は1限から授業があるから早く学校に行かなくてはいけないとわかっているけど、気が付いたら私は自転車を止めてコートの中に入っていた。
誰かが忘れてしまったのか、バスケットボールはただ静かにそこに鎮座している。
それを手に取り、ざらついたゴムの感触を確かめる。
懐かしい、本当に。

ダム、ダム、とドリブルをしゴールに向かって緩い弧を描くように放った。
感覚的にはゴールに入ったと思ったが、ボールはリングにあたり大きく弾かれてしまった。

「おりょ?」

あれれ、腕が鈍ってしまったか安西。
何度かチャレンジするもなかなか籠の中に入らない。
たった2年、されど2年。
バスケをしなかっただけどこんなに鈍ってしまうものなのか。

意地になって続けていくうちに蘇る過去の栄光。
そうだよ、私はすごかったんだあの頃は。
忘れてるんじゃないよ。

そう思いながら放ったボールは綺麗な円を描いて、スパンと籠の中に入った。

「よっしゃ!!」

まるで初めてゴールを決めたあの日のように。
無邪気に喜ぶ自分に気が付いた。
恥ずかしくなって辺りを見渡すと、誰も私のことなんて見ていなかった。
それが嬉しくて寂しい。

既に1限は始まっている。
軽く頭を掻いて自転車に跨った。

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