第9章 瓦解
「ケフカ」
「なんです」
ティナの額にもまた輪がはまっていた。感情が凪いだ瞳が"ビーカー"を映す。等身大のガラスの管は今や魔力を吸い出す事に特化した機械になり、ビーカーと呼ばれていた。保存の為にエーテル剤で満たされていた管は今や対象の魔力を吸収している。
「この人、生きているの?今、動いてた」
「…………」
心無い言葉が端的に質問を形作る。魔導士は高笑いを放ち、くだらないことを聞くなとだけ答えた。
───あれから3年の月日が経とうとしていた。今やティナは魔力の成長と戦いへの嫌悪から操りの輪を常につけた状態が当たり前となっていた。ケフカの精神は不安定さを増し、残虐さは留まる所がなくふいに感情を爆発させて暴れることが日常茶飯事だった。
それは傍から見れば大人しい支配された少女、暴虐三昧の魔導士、動く死体という事から変わらなかった。誰も何も疑問をもたず不安のある者も近寄りはしなかった。