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我が先達の航海士

第3章 真の風


「ね、眠れない……」
しかし午後4時から当直がある以上、寝なければ。まさか六つ歳下にドキドキする訳には行かない。小学六年生の自分と幼稚園児の龍水を思い浮かべた。小学校ですら届かない年齢差。それで何とか心を落ち着けて、短い眠りについた。その後のワッチも終え、錨を下ろし停泊させる。海図やコンパスで船位を図り、海図に記入し晩御飯。そこまでは良かったのだが。

「!俺と一緒に寝るぞ!!」
ドーーン!と龍水が大爆弾発言を投下したので、飲んでいた麦茶を吹き出しかけた。
「私はヨンパーだぞ。予定では朝8時からの操船とはいえ、万が一に備え、一応深夜の当直も決まってるんだ。そんな中で君と寝る訳には」
「安心しろ、俺のキャプテンキャビンは普通のベッドより広い!アロマオイルも用意しておいたぞ、貴様はラベンダーを眠る時によく用意するらしいな!?」

何処かからの情報漏洩と派手な誘いに、はヒィィイイ!と言いつつ頷くしか無かった。この船にはシャワールームはある。はそれでひと息ついて、午後9時半に寝間着に着替えた。本来のキャビンから龍水の部屋にやってくる。

「失礼しま……ッ!」
「ん?どうした」
何故か絶賛着替え中の龍水に出くわしてしまった。下のズボンまで着ているが、上が裸だ。バキバキに鍛え上げた腹筋に頬を紅潮させつつ目を逸らすを、龍水が観察する。

「ふむ。貴様は船乗りの筋肉が好きで彼等に幼少期から触ら
せて貰っては喜んでいたと義兄に聞いていたな。そんなに好きなのか」
犯人はお前かーー!は心の中で叫んだ。兄は弟が出来るとワクワクしてるらしく、龍水とも仲が良い。そのせいか情報漏洩が激し過ぎる。先程のラベンダーの件も恐らくそうだろう。
「ならこのまま共に布団に」
「う、上の服まで着ろ!」
なら仕方あるまいと龍水が着終わった。がそろりと目隠ししていた指を開ける。ん?龍水が居ない。

「」
「ほぎゃっ!?」
後ろからむぎゅり、と抱き締められる。
「矢張りはいい匂いがするな。ラクトンだったか?若い女性、それも10代後半は桃の様な芳香がすると云うが。は特に強い」
謎分析をされる中、色事など全くと言っていいほど経験して来なかったは思考停止している。
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