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我が先達の航海士

第3章 真の風


午前8時。達二人が担当から外れた。本来なら龍水も交代だが。
「はっはーーー!次も操舵するぞ俺は!?」
「正気か?夜は操船せずに停めるとはいえ」
「案ずるな、これでも鍛えてあるからな」
そういう意味では無いが。まあ龍水が言うならと三等航海士にバトンタッチした。フランソワから朝食が振る舞われる。バイキング形式の豪華な食事に、船員が皆美味しいと泣いている。

「姉さん。航海士以外にも、機関長とかエンジン見る人居なかったっけ」
SAIの疑問に、共にご飯を食べるが答える。
「普通の船なら居るよ、機関長と一等から三等の機関士。でも帆船では免除されるんだ」
「もしかして、龍水がああやって操縦出来るのも帆船だから?」
そうだよ、帆船は帆で動いていれば手漕ぎボートと一緒みたいな物で免許無しでいけるんだ、とが頷く。

「午後4時までは当直無いから昼寝をするんだ。睡眠を取るのが酔い止めにもなるから。あとこれ」
「これは……?」
手渡された薬の箱をSAIが見た。方位磁針の文様と『アネロン』と商品名が書かれている。
「船酔いにはパターンがあってね。大多数は多少酔うけど仕事には支障が出ない人。あとかなり酔うけど仕事はこなせる人。波を見ただけで無理な人以外、割と何とかなるよ」
そうなんだ、とSAIが手渡された薬を有難く貰い。
ここで飲んどけば良かった、というのが後にSAIの日記に書かれる事になる。

昼寝タイムの最中。船首側の船底が波で浮き上がり、落下した際に波しぶきがブリッジにかかる。スラミングという現象だ。ブリッジの船員がひーー!!と突然の時化に倒れる。昼寝から起きて復帰したがブリッジの様子を見て、大急ぎで操舵室へと向かった。続くSAIも死にそうになりながら酔い止めを飲む。流石から貰った酔い止め、効きが良い。

「七海船長。状況は?」
「凛!これぞ船の醍醐味だな。大丈夫だ安心しろ、俺は平気だ!」
「そうだろうな、君は」
ゼロヨンワッチの二等航海士から担当を変わる。
「いいか、『見かけの風』に騙されるな。船に乗ってる者から観測できるのかこれだ。マストの頂点の旗を見れば分かる。それより『真の風』を見るんだ!海面の風紋を見れば、舵の切り方の解を導ける」
「了解した!!」
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