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我が先達の航海士

第3章 真の風


航海士は基本的に三人制で交代して当直にあたる。一等から三等までの航海士。それぞれ一日2回、4時間の当直を担当する。一番若手の三等航海士なら、午前8時〜午後0時、午後8時〜午前0時が担当だ。時間の数字から『パーゼロワッチ』などと呼ばれる。

現在午前5時。『ヨンパーワッチ』の一等航海士の出番だ。昼と夜の狭間を経る最も難しい時間帯で、周囲の船の状況把握が困難だ。凛が海図を見つつ判断、操舵手に指示を出す。

「ポート・ファイブ」
「ポート・ファイブだな!?」
『サー』って復唱する時にラストに言うんだよ、とが苦笑した。左に5度、操舵手の龍水が舵を回す。船長は本来操船も、こんな風に操舵手をする事も無い。

船長が操船する時は自船の位置確認と他船や浅瀬、岩礁を避けて目的地までの進路を決定。その通りになる様に当直の操舵手に任せるのだ。航海士はレーダーと海図から情報を監視と測定、船長が航海士の情報と自分の目を総合し指示を出す。

しかし龍水は自分の手で道を切り開きたい人間だ。喜んで操舵手をやる中、は双眼鏡で船長役の立場に。そして航海士をSAIが担当していた。本来の航海士の仕事の補佐の筈が、当直航海士として船長役のを手伝っている。

「今更だけど。なんでGPSとかレーダーとか無いのさっ!」
「はっはーーー!帆船はそんな物無しで世界を航海したのだ。無くて当たり前だろう!?」
「それは違う」
とSAIの声がハモった。確かにそうだが、GPS等があるだけでどれほど航海しやすくなることか。SAIが泣きながら凛の補佐をして、何とかヨンパーワッチが終わる。
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