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我が先達の航海士

第3章 真の風


「前から三列目、真ん中のブロンドの髪の女性の方、どうぞ」
の言葉で週刊誌NEW WAVEの北東西です、と立ち上がり質問する。
「セイル・トレーニングとはどの様な物でしょうか」
「ん?貴様、あの催しを知ら」
「大学で開催している、青少年育成の為のトレーニングでございます。具体的には」
龍水が余計な事を言う前に割り込み説明する。の方が懇切丁寧なので、質疑応答は彼女に集中した。会見が何とか終わる。

「北東西さん。この度は来て頂き、ありがとうございました」「あ、いえ!」
会見部屋の出口。穏やかな笑顔で七海財閥の子会社製造ミネラルウォーターを渡す。しっかり冷えたそれを受け取った。招待した記者の名前と顔を覚えたが挨拶しつつ水を手渡すのを、南は眺めた。編集長と相談し、記事のタイトルを打つ。

《七海財閥の御曹司と美しき海の姫君の婚約》

ヴェールに隠されてきたご令嬢・の華々しい経歴や人柄、天下の七海財閥との婚約、とをメインに据えた。他社も七海財閥に配慮し同様の記事を出した。一部龍水のぶっ飛び散財やらを悲運の姫君とする報道もあったが、致し方無し。七海財閥は龍水を面汚しだと嘆いた。

「よし、出航だ!」
龍水が叫ぶ声で南の意識が現在に戻る。
「セイルの張り残しは無いな。では行こうか」
次々と持ち上がる記者のカメラに、南も自身のカメラのシャッターを握った。船首で敬礼するセーラー服の女性。ポニーテールにした黒髪が後ろで揺らめく。絵になるの姿を写真に収め、南は見送った。3700年後、共に航海する人物達の姿を焼きつけて。
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