第12章 一日奥方1 【家康】R18
「名無し、貴様に三成の妻となる事を命ずる」
「え‥‥‥‥‥‥ええっ?!」
「冗談はやめて下さい。名無しは俺の‥‥!」
突然の命令に狼狽する俺と名無し。
その様子を、信長様は目を細め明らかに楽しそうに見やる。
「落ち着け。1日限り、だ。意気消沈している奴を妻として癒し、励まし、復帰させる事が任務だ。寝食もままならぬ三成は、このままでは使い物にならん」
「色々と手を尽くしてはみたが、ダメだったんだ。名無し、頼む‥‥」
秀吉さんがすまなそうに付け加える。
「‥‥一体何をすれば良いのでしょうか‥‥」
名無しが戸惑った声で聞くと、
「貴様が1日、家康にしてやってる事すべてだ」
信長様は当然だとばかりに言い放った。
「1日と言ってもいつまで?朝から晩まで、ですか?」
俺は被せ気味に聞く。
妻として?まさか夜も‥‥?そんなのありえない。
「それは三成と名無しが決める事。必要ならば夜まできっちりと妻の役目を果たすがいい」
俺の表情はどんどん歪んでいく。
もう止められない。
そして信長様は明らかにそれを楽しんでいる。
「‥‥くっ‥‥」
何なんだ一体‥‥。
名無しがよりによって三成の妻に?
夜まできっちりって、意味わかんない‥‥。
「良いな、名無し。これは命令だ」
「‥‥恐れながら信長様、私は家康の妻。主人の同意が無ければできかねます」
名無しも非常に困った様子だった。
「武将として生きるからには、人質など、状況により妻を差し出す覚悟など、とうにできているはず」
信長様同様、明らかに楽しんでいる様子で薄い唇に笑みを浮かべながら、光秀さんが口を挟んだ。
「ましてや今回、人質ではない。たった1日限り、それも大事な仲間の三成を助けるため。断る程、家康は器の小さな男では無いだろう。なあ」
「三成なんか、大事でも仲間でもないし。はぁ‥‥もうわかりましたよ 」
何を言っても無駄だろう。
せめてもの抵抗でため息をつく。
「家康‥‥」
「話はまとまったな。早速明日、三成の御殿へ行け。三成には言うなよ。驚かせてやれ」
信長様は脇息にもたれながら高笑いする。
「せいぜい妻として三成を愛してやれ」
俺はギュッと拳を握りしめた。