第33章 歪んだ愛で抱かれる 後編 【三成】R18/ヤンデレ
三成の胸に受けとめられた名無しは、その瞬間にあの時と同じ感覚に包まれた。
望んだ通りに好きな人に抱きしめられ、体の中で何かが弾け飛ぶような感覚。
着物越しの引き締まった筋肉の弾力も、
じんわりと包まれる温もりも、
相思相愛の喜びに満たされたあの夜と同じ。
(やっぱり好き…)
湧き上がる素直な思いを噛みしめながら目を閉じる。
それなのに、聞こえてきた言葉は耳を疑うようなものだった。
「今のご自分の立場をわかっていないようですね。貴女は私の最愛の人ですが、今は私の戦利品なのですよ」
口調は相変わらず穏やかだけど、その声は低く狡猾な響きがあった。
名無しはハッと目を開けて、纏う空気が一変した三成を見上げる。
「ああ、語弊がありましたね。決して名無し様を物扱いしているわけではありません。ですが、私が戦って奪い取ったのだから、その心も体もすべて、私が好きにする権利がある」
(本当に…三成くんなの…?)
顎を少し上げ、目を細めて微笑むその表情は妖艶で…
天使のようだと思っていた彼の豹変に驚愕して、反射的に身を捩らせて逃れようとすると、彼はあっさりと名無しから手を離した。
彼が含み持つ危険で不穏な陰。
愛し愛された夜にも感じていたけれど、相思相愛の喜びのあまり名無しは見て見ぬふりをしてしまってた。
今はそれが彼を侵食している。
まるで陰が光を凌駕したかのように。
(怖い…)
衝撃と怖れから名無しが後ずさると、
「…あっ!」
両手を拘束している紐がグンッと引かれ、その勢いで褥に前のめりに倒れこんだ。
長い紐の先を手に、倒れ伏した名無しを見おろす三成の余裕に満ちた表情。
それは怖いのにゾクゾクするほど綺麗だった。
不思議な感情の昂ぶりから、名無しは突っ伏したまま三成を見上げて声を荒げる。