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イケメン戦国 書き散らかした妄想

第33章 歪んだ愛で抱かれる 後編


本当に喉が渇いていたのか、こくこくと小さく喉を鳴らして、名無しは液体を飲み干した。

やがて今の状況を理解した彼女は、三成に対してどんな反応を示すのだろう。

怖れ?

拒絶?

軽蔑?

否定的な反応を一瞬だけ懸念したが、それでもいいと、すぐに思い直す。

もう彼女を閉じこめて自分だけのものにしたのだから。

いくら罵られても、どんなに憎まれても、

名無しの頭の中が自分への感情でいっぱいならそれでいい。

「お怪我はありませんか?」

落ち着き払った心持ちで構え、気遣いをこめて問いかける。

「…ここはどこ?」

ようやく聞けた名無しの声は弱々しくかすれていた。

「私の御殿です。もう大丈夫ですよ」

「……蘭丸くんは?」

彼女から二言目に出たのは、最も聞きたくない他の男の名前。

三成の眉がピクリと小さく顰められる。

「…わかりません」

「ほんとに?」

むしろ知りたいくらいだった。

何しろ襲撃後の記憶が抜け落ちてしまっているのだから。

顕如との内通疑いで蘭丸も捕らえるつもりだったのに、おそらく逃げられたのだろう。

「ええ。わかりません。私も彼の安否がとても心配です。無事でいてくださればいいのですが」

本心とは裏腹なことを言い、心配そうな表情まで浮かべてみたのに、

「お願い!お願いだから、蘭丸くんには何もしないで!」

名無しは必死な様子で懇願する。

三成が泰俊を陥れ命まで奪おうとしたのがあまりに衝撃で心苦しく、

自分のためにこれ以上誰かが傷つけられるのは耐えられない、

今の名無しの頭の中はその思いでいっぱいだった。

「ねえ!三成くん!お願い!」

「……」

三成はじっと押し黙る。

先ほどまでの余裕は何だったのかと、自分で自分に呆れた。

策略を邪魔した忌々しい男のことで名無しが必死になっているのが本気で許せない。

そのとき脳裏に浮かんだのは、以前彼女に言われたある言葉だった。
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