第31章 歪んだ愛で抱かれる 前編 【三成】R18
長旅で疲れたと夕餉を断って閉じこもっていたら、みるみるうちに日が暮れていく。
濃くなる夜闇に心がどっぷりと呑まれてしまいそうで怖くなり、灯りをともした。
何だか暑い…
着物が重い…
鬱陶しい…
脱ぎたい…
喉が乾いた…
色々考えすぎて疲れ果てた頭はぼんやりとしていて、体が求める欲求だけが浮かんでくる。
重ね着していた小袖を脱いで襦袢姿になっても暑いままで、名無しは体の違和感に気づいた。
鼓動と呼吸が妙に早くソワソワと落ち着かない。
(私…変…)
下腹部から熱いものがこみ上げてくるような感覚。
それにビックリして、止めるようにぎゅっと膝を閉じる。
(何これ…どうして…?)
精神的に打ちひしがれているのに、体から湧き上がっていたのは性的な甘い衝動だった。
経験がないまま嫁ぎ、多忙な夫に抱かれたのはまだ3回だけ。
優しく触れてくれたので嫌悪感はなかったが、まだよく知らない相手との行為に抱く感情は困惑や恥ずかしさ。
何よりも、これが好きな人と深めた愛情の延長ではないことが哀しくて切なくて、もちろん快感に至るはずはなかった。
なのに今は妙に体がうずき、まだ得たことのない快感を激しく求めている。
(…私…愛されたい…!)
そう強く思った。
愛で抱かれて、心から満たされて、大きな快感を得たい。
それも自分だけに向けられた愛で。
だけど政略結婚した以上、きっと一生叶わない。
「うっ…ぅっ…くっ…」
絶望感からぶわっと溢れた涙で視界がかすみ、唇からは嗚咽が漏れた。
虚しいうずきを慰めたくて、名無しは震える片手を襦袢の胸元に滑りこませて膨らみをなぞる。
小さな頂きに到達すると褥の中で泰俊がしていたように指先でそっと転がした。
「あっ…」
その瞬間、敏感な部分から甘い痺れが走り、脳まで貫く。
(きもちいい…)
もっと刺激が欲しくなって片手で胸を触りながら、もう片方の手を伸ばして襦袢の裾を割り、少し汗ばんだ内腿から下腹部へとたどっていく。
熱くなっているそこを指先でこすると、また違った刺激が得られた。