第31章 歪んだ愛で抱かれる 前編 【三成】R18
「秀吉さん、三成くん、ありがとう!どうかよろしくお願いします」
「お任せください」
笑顔を浮かべた名無しの目を三成は真っすぐ見つめて頷き、優しく微笑み返す。
そんな仕草は名無しにさらなる安堵を与えた。
人に頼れること、心を通わせられることがこんなにも心地よいなんて…
川名家で冷たく扱われてきたから、二人の優しさが胸に沁みて涙が浮かぶ。
「ああ…もっと早く気づいてやれば良かったな。ずっと辛い思いをさせて本当に悪かった」
「いえ…違うの。どうか謝らないで…!」
悔しそうな表情を浮かべる秀吉に、名無しはあわてて涙をぬぐい首を横に振る。
「泰俊はどんな男だ?実直な人物だと聞くが、お前に優しくしているか?」
「…」
夫・泰俊と実際に接した時間は短くてまだ掴みきれていないし、気に掛かる点もあるというのが本音だけど、さらに心配をかけるのも申し訳なくて、
「うん、とても優しい人だよ」
名無しは胸の内を隠しながら言葉を続ける。
「……初めて会った日にね、『政略とはいえ結ばれた縁を幸運に思う。一生添い遂げよう』って言ってくれたの」
輿入れの夜、極度の緊張から褥の中で震えていた名無しを後ろから抱きしめて、泰俊が言った言葉。
そして、そっと振り向かされ口づけをされた。
その後の閨事まで思い出されてしまい、名無しは恥ずかしくなって頬が熱くなる。
誤魔化したくて慌ててわらび餅を口に運びお茶を飲んだ。
三成がピクリと眉を顰めたことには全く気づかない。
「それならいいんだが。また何かあれば遠慮なく言えよ。いつでも力になるからな」
「ありがとう、頼りにしてる」