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鍵穴(トリガー)の先

第4章 あの日の君はもういない


ゆり「ごめんなさいね、私たちまで。無理に買ってくれなくてもよかったのに」

「いえ、私が個人的に渡したかっただけなので。喜んでもらえたら…」

ゆり「うふふ、後でゆっくり頂くわ」

さくらんぼは留学のお土産を渡すと、ブランケットとホットココアを持って屋上に上がる

「今日は星が奇麗に見えるって言ってたし、ニューヨークでは夜景で星なんて見えなかったもんなあ…」

幸せそうな独り言を言いながらドアノブに手をかけた瞬間

ためらった

が、数秒、一息ついてドアに力を入れた
キイ、と甲高い音は相手側にも聞こえたようで

「空閑君…」

遊真「さくらんぼか、どうした?」

「ううん、特に用事はないけど………………………
く、空閑君は何してるの?」

遊真「おれも…特にはないけど?」

「そ、そうなんだ…」

まだ二人きりという状況に慣れていなくてうまくしゃべることができない。何とか言葉にしようとするも、唇の先が微々たる振動をするだけだった

遊真「…怖いのか?」

「なっ、何を⁉何が⁉別に⁉」

遊真「焦りすぎだよ。しばらくほっとくから落ち着け」


さくらんぼはこの震えをひとまず何とかしようとココアを喉に押し込んだ

「はあ…
駄目だな…私」

遊真「…」

「小南ちゃんに言われて頑張ってみようとしたけど…
やっぱり無理だ」

遊真「確信犯か?」

「えっ?…は、はい
私のサイドエフェクト、透視と遠視なので…存在は分かってました」

遊真「二つ…向こうの世界でも見たことないぞ」

「迅兄も珍しいって…大切にしろって」

遊真「こんなこと聞くのあれだけどさ…お前は何に怯えているんだ?」

「…ごめんなさい、今は言えない。
ただ、私も変わりたかったの。私、人につい警戒心抱いてしまって、私はその方が落ち着くんですけど…小南ちゃんから「そっちのあんたはつらそうに生きてそうに見える」って言われちゃって…玉狛のみんなには昔からいろいろお世話になってるから…せめて私が元気そうでいなきゃって思って…」

遊真「そんなもんなのか?日本人って」

「え?」
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