第10章 靄がかかった真実
3年後、研究所は火事に見舞われた。父親は煙で死亡したが、私は運良く生き延びた。監禁していた部屋が地下だった為だ。
その後、母から黒トリガーは祖母の命から作られたことを知らされる。研究のレポートにも被験者がバッチリ載っていた。起動できたのは、少なくとも血が繋がっているからだろう
生まれた時から祖母の顔をぼんやりとしか覚えていないのはこの為だった
「私は元から反対していたの。こんな人道的な事…人の命でしていい筈がない。でも…圧力には勝てなかった。
ごめんね、さくらんぼ。母親として失格だよね…」
お母さんは私を涙を流しながら抱き締めた
その後エンジニアとしての実権は私に譲られた。お母さんにそれを続ける力はもうないし、トリガーを持っている本人が責任者になってくれると効率がいいと本部の判断だった。
早に大人になった私。しかし、周りの同い年の人達は私を受け入れてくれなかった。
何より黒トリガーの影響で身体が変化してしまったことが大きかった。化物だと虐められた。
もう一人になりたくなくて、見捨てられたくなくて、ずっと自分を偽って来た。相手の望む"顔”を演じ続けた。
傷も隠して、目の色もコンタクトレンズで変えて、
友達の間ではなんでもいいね、という気のいい奴に。大人の前では効率を第一に考え、切り捨てることをいつでも厭わない奴に。
「人の顔色ばかり窺って…その内に、他人と話すことが疎ましくなってきて……
引っ込み思案になったのはきっとその頃です。
けど、玉狛の皆とは昔からの付き合いだったから、壁なく会話できるんです。それだけが、心の支えでした
でも、空閑君は…
私のことを”任せる”って言ってくれた。それが、嬉しかった。
だって、顔色を窺う必要がもうないから」
遊真「…!」
「本当の自分で接することができるかどうかは保証できませんけど……
その許しがあるから、私は、私でいることを許されるんです」
「迅兄は…三雲君達との出会いが、私を変えてくれるって言ってたけど…
信じていいかな?」
そう言って困ったように笑うと、空閑君は額をくっつけてきた
「!」
遊真「…いいよ、信じて。
おれはその為に、ここに来たから」
「…………え?」